風邪
今風邪をひいている。
熱、喉の痛み、気だるさと三拍子揃った超一流だ。
大学生になり、実家を出て一人暮らしをはじめて風邪の恐ろしさを知った。
誰も看病などしてくれるものはおらず、一人で戦わなければならない。
孤独と病魔 対 自分 という変則マッチ。
腹は減らないがそれでも何かカロリーを、と思い、動かぬ体で部屋中を這いずりまわる。
自炊はゆで卵に限る我が家で、今この身を救ってくれる栄養源に出会うのは、もはや宝探しに近いものがある。
やっとの思いで、見つけた唯一の食べ物はプリングルスだけだった。
ヒゲである。
ヒゲのポテトチップスである。
あぁ、神様はなんといじわるなのだろう。
それでもようやく見つけた食べ物だ。とりあえず口にしなければ。
パサパサに乾いた口の中にパサパサのポテトチップスを放り込んだ。
当然パサパサである。なんのことはない。パサパサONパサパサだもの。
こうなることはわかってたもの。
言うなれば、マラソン中やっとの思いでたどり着いた給水所に、粉末のポカリスエットが粉のまま置いてあった感じか。
食べ物ない。飲み物ない。薬買うお金ない。
じゃあ今の僕に何ができるだろう。
答えは一つ、睡眠だ。
これに限る。病魔など自力でどうにかしてやる。孤独などのちのち後悔すればいい。
布団に入るが、自らのセキが睡眠を邪魔する。
とりあえず落ちつかなければ。寝ろ。寝ろ。寝ろ自分。
羊でも数えるか、プールの次の授業でもイメージするか。
そんなことをしているうちに、ようやく眠りの尻尾が、僕の目の前に現れた。
おやすみ。グッバイ風邪。あぁ。。。
その時だった。
部屋に爆音でインターフォンの音が鳴り響いた。
僕は一気に眠りから現実に引き戻された。
私の眠りを妨げるのは誰だ!
怪物とか妖怪とかがよく言うセリフが自然と口にでる。
あ、なるほど、そりゃ怒るわ。
またしても気だるい体をひきずって、インターフォン口まで行った。
どちらさまですか。
「あのー宗教団体の者なんですけど募金をしていただけないでしょうか?」
、、、ぶっとばすぞ。
例えこの先どんなにこの身、精神が弱ろうともお前のとこにだけはすがらないからな。
薬買う金もないのに、なんでお前に?
弱った子羊叩き起こして、その上金くれってあんたそりゃ神様じゃなくて悪魔だよ。それやっていいのはベタな不良少年と飲んだくれだけだって。そんな家族持ってないし。
僕の手は握られたままワナワナと震えていた。
しかし怒鳴りつける勇気はなく、小さくすいませんとだけ言って帰ってもらった。
また布団に入り。いちからやり直しだ。
セキは相変わらず止まらない。
再び数えなおす羊のなかに1頭だけか弱き子羊がいた。
そいつの顔は僕にそっくりだった。


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