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2007年6月12日 (火)

ペットボトル

Photo_8 暇だったので、ペットボトルに指を入れて遊んでいたら抜けなくなった。左手の薬指と小指。二人の戦士は今、一つのダンジョンから抜け出せずにいる。

今もその状態。まぁ利き手じゃないからいいものの、慣れているはずのキーボード打ちすらうまくできません。僕、今頑張ってるよ。

一生このままだったらどうしよう。不便だな。

でも逃げ出したって、何も始まらない。向き合おう。プラスに考えてみよう。

この左手でプラプラしてるペットボトル。きっと何かに使えるはずだ。

とりあえず、ラベルを外そう。そっちのほうがなんだかシンプルでかっこいい。僕は改造人間だ。人体に兵器を組み込んだのだ。

とりあえず背中をかいてみる。広範囲を捉えられてなかなかいい感じだ。ただ一向に肝心のかゆみが治まらない。何の意味もない。

硬いから、ほら、それでも俺の指は硬いから。だってペットボトルだもの。

とりあえずテーブルを叩いてみよう。うまくいけばトンカチいらずだ。

よいしょ!

少しだけ涙が出た。ばっちり痛い。指が折れたかも知れない。ペットボトルに覆われてる部分は平気だったけど、これじゃ指の根元が持っていかれる。

違う、違うよ。そうじゃない。

ペットボトルの底面で殴るんだ。殴るというか押し込むというか。突くというか。

よいしょ!

・・・痛くない。これはすごい。なんて新しい発見なんだ。

ただ指はもっと深く入ったみたいで、さらに抜けにくくなったようだ。

そう簡単にうまくいかない。まぁ誰だって最初は環境の変化に戸惑うものさ。

僕はタバコを口に咥え、火をつけた。

すごい匂いがする。ライターの火の熱でペットボトルが溶け出したようだ。

冷まさなきゃと思ってぶんぶん手を振ってみた。

すこしだけ涙が出た。ペットボトルの部分が思いっきりテーブルにぶつかった。ばっちり痛い。これはもうたぶん指が折れている。

何やったってダメだ。うまくいきやしない。

僕はその場に寝転がる。ふて寝だ。その時いつもの癖で何気なく頭の下に入れた左手。ペットボトルの左手。

まったくなんてフィット感なんだ。ペットボトルがちょうど枕がわりになる。普段から硬い枕愛好家の僕にピッタリじゃないか。

もうこのまま寝てしまおう。せめていい夢が見れればいい。むにゃむにゃ。

あれ? おかしいな。ちょっと首が痛くなってきたぞ。

僕は左手を頭の下から外す。

まぁいいんだ。僕は寝るから。別に左手にペットボトルが付いてたってなんら睡眠に弊害があるわけじゃない。

目を瞑って現れる闇。その闇よりさらに深い闇へと吸い込まれていく。こんにちは睡眠。いや、こんばんはが正しいのかな。

僕は寝る。続きは明日・・・また・・・考えよ・・・う・・・―。

パキィッ!!!!

「何!?」

まどろみは一瞬にして切り裂かれた。ビックリして心臓が止まるかと思った。

ペットボトルが鳴った。多分枕代わりにしたときにヘコんだのが元にもどったんだろう。その時の音なんだろう。

もう嫌だ。役に立つどころか邪魔ばかりだ。

もう怒った。本気で抜いてやる。指ごと引っこ抜くぐらいの勢いで勝負だ。

痛い。すごく痛い。しかし覚悟の上だ。

んぎー。

スポンとみごとな音がした。そこにはいつも通りの指と、いつも通りのペットボトルがあった。抜けたのだ。ようやく。開放されたのだ。

抜けてしまえば、今までのことがすごくバカらしく思える。一安心だ。入ったものが抜けないわけがない。こんなことで四苦八苦するなんて愚かな話だ。

そうだ。抜けないわけない、抜けないわけがない。じゃあもう一回いれても大丈夫。もう一度あのスリルを楽しみたかった。僕は意味不明な方程式と、わけのわからない好奇心で、もう一回指をペットボトルに入れてみた。

また抜けなくなった。でもなんか今度はもう抜かなくてもいいと思った。そして今のこの状態。

ペットボトルの中での僕の指はまるで宝石の様に赤い。

またその赤はきっと危険信号の赤でもあるのだろう。

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コメント

はじめまして。
せっかく抜けたのに、また指を入れるっていうチャレンジ精神。
涙出そうでした。

投稿: peri | 2007年6月12日 (火) 16時15分

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