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2007年6月19日 (火)

思い出写真館

Omoidesyasinkan_2 僕は写真を撮られるのが大嫌いだった。嫌い、というか苦手だった。とは言っても、それはけっこう最近まで続く。写真に撮られるのが嫌だと意識したのはいつ頃だったろう?

本当に小さい頃の写真は残っている。きちんと笑顔も向けている。でもその頃の写真の僕は何故か必ずと言って良いほど全裸。赤ん坊の頃は仕方がないとしても、3歳ぐらいになってもまだ全裸。もはや性器の成長を見守っているとしか思えない仕様だ。別に今でも完結編としてそんな写真を撮ってもいいのだが、現像に一悶着ありそうなのでやめておく。

きっと小学校の高学年ぐらいの頃からだ。僕が写真嫌いになったのは。その頃から僕の写真がめっきり減る。単純に親と旅行などに行かなくなって、シャッターチャンスが減ったからかもしれないし、親が僕にきっとそれほど興味がなかったのもあるのかもしれないけど、本当にその頃の僕の写真というのは少ない。

ただこれは余談だが、うちのババァの写真はどの年代でも腐るほどある。うちは兄貴と僕の2人兄弟なのだが、僕ら2人分よりも遥かに多い。ババァなりの決めポーズというか、決め角度があるのだろう。どの写真も同じように見える。ただ髪型だけが年代によって微妙に違う。トラウマ必至の狂ったヘアカタログのようだ。それを裏返して神経衰弱のような遊びもできるのだが、当たっても外れてもムカつくので誰もやらない。とまぁ、とにかくかなり頭にくる代物だ。

その数が多すぎてあまりに邪魔だったので、何かに使えないかと考えたことがある。コップの下に置いてコースター代わりにしてみた。コーヒーがいつもより苦く感じた。

この辺で話を戻そう。僕は小学校の高学年の頃から写真を撮られるのが嫌いだった。これは今でもそうなのだけど、まず笑顔がうまく作れないのだ。にこっとできない。恥ずかしいというか、自分の笑顔が好きじゃないんだろうな、たぶん。その頃好きな女の子から「お前の笑顔ってなんかきったねぇな」 とでも言われたのかもしれない。記憶にはないけど。そのぐらいの年になって、自分の顔というものを意識して、早くも見切りをつけてしまったんだろう。自分はクール系で勝負しようと。

だからほんの数枚だけあるその頃の写真も、すっごくつまんなそうな顔をしている。別に自由研究で1日中ずっと亀の観察をしているときに撮られた写真でもないのに。あれ確か4年生のときの自由研究だったかなぁ。あんな無駄な時間を過ごした事は後にも先にもない。だって亀動かねぇんだもん。

さっきも言ったとおり、うちには兄貴がいるのだが、この兄貴の写真というのもまた笑顔で写っているものがめっぽう少ない。まったく兄弟というのは変なところで似るものだ。だから家族写真なんかがあると僕ら兄弟はちっとも笑っていない。他人がみたら虐待されているように見えるに違いない。

それは中学生なっても続く。というより中学生の頃がピークだったかな。もう撮られるのが嫌で嫌でしょうがなかった。中学の卒業アルバムを見ても、個人写真と集合写真にしか僕は写っていない。絶対写らなきゃいけないその2枚だって本当は嫌だった。かと言って、撮影の日に休んだりすると、右上にビップ扱いで表示されて逆に目立つため、それもできない。そんな僕が文化祭や修学旅行の写真にうつっているわけもなく、みんながカメラを向けられ笑顔で応える中、僕は一人隅のほうで、何故か制服のポケットに入ってる砂を必死でかき出していた。

それを立証する写真はないが、それでもそれから確かに時間が流れた。

卒業式の日が来た。泣き崩れる生徒たち、そんな中でどんな顔をしてたらいいか今一わからない僕。式が終わって、学校側から提供してくれる全てが終わったのだ。

それでも教室には名残を惜しんで、帰ろうとしない生徒たちが大勢いた。僕もその一人だ。ほとんど写っていない卒業アルバムに寄せ書きなんて書いてもらって。みんなふざけてろくなことを書いてくれるやつなんか一人もいなかったが、それが僕にとっては誇りだった。そうゆう仲間たちで良かった。寂しいだの悲しいだのは胸の内に秘めろ。そういうのは他のやつに任せればいい。俺達は最後の最後までふざけようぜ。

一通りみんなに書いてもらった後、僕は席を立った。卒業アルバムを持って。あの子に近づく。その子はたくさんの友達に囲まれていた。密かにずっと思っていた。片思いだった。こんな僕と仲良くしてくれて本当に嬉しかった。僕の青春時代に一輪の花を添えてくれた人。もう会えないのかな? 胸に秘めたはずの寂しさが、その時ばかりはあふれ出そうだった。

「なんか書いてくれない?」

上ずった声で僕は、その子に自分の卒業アルバムを差し出した。その子は笑顔で、もちろん、と言った。僕がどうやってもうまくつくれない笑顔、君はそうやって完璧にこなすんだ。君のような笑顔ができたなら、僕も少しは違ったのかな。

「そのかわり・・・」 彼女が遠慮がちに言った。ん?なんだ?

「写真・・・撮ってくれないかな?」

・・・え!?

僕は耳を疑った。なんてサプライズ。撮るよ、撮る。やばい、すげぇ嬉しい。最後の最後でこんな思い出ができるなんて。憧れのあの子と写真が取れるなんて。焼き増しして送るね、なんつってそっから文通とか始まっちゃったりして。お前写真嫌いだろって?え?誰がそんなこと言ったのさ?

その時の僕の笑顔は、彼女のそれとはいかないまでも、なかなかのものだったと思う。正直嬉しかった。それまでの学生時代の全ての過ちや後悔が、たったそれだけのことで許された気がした。

「もちろん!」

しまった、声がでかくなってしまった。でも彼女はそんなのお構いなしだ。よかった、といつもの笑顔。あぁ、やっぱり君の笑顔にはかなわない。そのとっておきの笑顔で永遠に残るツーショットを撮ろうじゃないか。

そう思った僕に彼女は僕に「じゃあこれ」とカメラを手渡してきた

ん?何やってんの?それじゃ一緒に撮れないよ?

彼女は友達と一緒にこっちに向かってピースをしている。

僕は思った。写真なんて大嫌いだ。写真撮るってそうゆうことかよ。

なんて哀れなんだ。はいチーズ、じゃねぇよ。

でもこんな悲劇ってベタだよな、それこそカメラ向けたらピースするようなもんだよな。

その時は生きているのが多少つらくなったが、今死んだらろくな遺影が残せないと思ってやめておいた。だって僕の写真は少ないからね。

今は別に写真を撮られるのは嫌ではない。みんなが写っている中に僕の姿がないと、寂しく思ったりもする。ただ未だに笑顔ではない。例えそれがどんなにふざけて写っていても。僕の写真での最後の笑顔は、卒業式のとき写るはずだったまま、思い出として引き出しの奥の奥のほうに閉まわれている。ほら、フィルムってのは光に弱いからさ。

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