久しぶりと懐かしいは違うから
そう、久しぶりに僕らはその部屋に集まっていた。高校時代の同級生の家、数少ない高校時代の友達、あの頃のいつもの3人。タバコの煙で視界は曇り、それでもそれぞれがいる位置はわかる。この場所ならばきっと目をつぶったって歩けるんだ。この家の主である、まぁ仮にH君としておこう。そのHの一言で僕達は久しぶりに再び集まった。Hがなにやら僕らに相談があるというのだ。
「なぁ、どうやったらモテる?」
単刀直入なHの質問は、ほとんど誰もが知りたくて、ほとんど誰もがその答えを模索したそれ。当然自分で考えるべきである。あらゆるメディア、さらにはこのように友達からヒントを得ることもあるだろう。しかし、こういったものは大部分が自分で失敗して学び、そして知っていくものである。そうは思う。
でも僕らは相談にのった。考えうるもっとも正解に近いものを彼に教えようとした。なぜなら彼には時間がなかったのだ。彼にはこの後合コンが控えていた。それは彼にとって遊びのレベルではなく、言うなれば真剣勝負である。僕らはHが高校時代どれだけ悲惨な生活を過ごしていたか知っている。今まで何故彼にだけこんな不幸が訪れるのかと、半笑いで神を恨んだ事もある。ここで何かを教えてしまう事は、もしかしたら甘やかしかもしれないし、彼のためにならないかもしれない。でも、僕らは彼の、ただ彼の笑顔が見たかったのだ。
どうやったらモテるか。何度も考えて何度も失敗してようやく尻尾を掴んだかと思えば、するりと手の中から逃げていった。答えがあるならそんなの僕が聞きたいくらいだ。そもそも僕らに聞くほうが間違っているんだ。しかし、彼が頼ったのは他の誰でもない僕らだった。その選択を間違いだったとは思われたくない。そして、思わせたくない。だから僕らは考えた。部屋が白く濁るほどにタバコを吸った。

もう一人の友達、仮にOとしよう。沈黙を破るようにそのOが口を開いた。
「やっぱ見た目だよな」
怖ろしいほどに的確な意見である。根本的な部分はどうにもならないが、服装ならまだアドバイスの余地はある。何度も言うがHが僕らに頼んだのであって、余計な事を偉そうなわけではない。Hが合コンに着ていくつもりの服を見せてもらう。しかしなにか、こう、インパクトが足りない気がする。ような気がした。
「もっと男らしいほうがいいかな。元気丸出し!みたいな」。僕がそう言うと、Hは洋服ダンスの中を漁りだした。Oと僕もこれに続く。「お、これいいじゃん!」。そう言ったOが取り出したのはデニムのショートパンツだった。ほうほう、さっそくHに着替えてもらう。
・・・あぁ、なんて短いんだろう。それはショートパンツというより、半ズボンといった表現がぴったりだった。昔のアイドルのような、小学生のような。
僕「これ、何?」
H「俺もわかんない・・・」
本当にまるで小学生だった。彼は何を思ってこの半ズボンを入手したんだろう。でも母性本能をくすぐる・・・だなんてこともよく聞いたりするし。これはこれでありなのかも知れない。「何か足りないな」。Oが言った。確かにそうなのだ。これはこれでいいとしても、何かが足りない。・・・もしかして。僕はHのはいている靴下をドーナッツ状に丸めた。

O「そうだ!それだ!」
僕「こんなやつクラスに一人はいたよな!」
きゃっきゃ喜ぶ僕とO。それを道に落ちているサバを見るような目で見るH。
H「およそモテる気がしないんだが・・・」
僕とO「大丈夫。頑張れ」
さらに探求は続く。Oが言う。
「やっぱり女の子が好きなものを持ってるべきだろ」
それはごもっともだ。Hも僕もうなずく。女の子が好きなもの?・・・お菓子?
僕とOによって、Hの各指にとんがりコーンがはめられていく。全ての指にとんがりコーンがはまったHは、確かに今までの彼ではなかった。

「おーこれはモテるな」
そう言いながら、Hがこれから合コンに着ていく予定のさっきのデニムで自分の指の汚れを拭くO。その相変わらずの姿に少しほっとする。これもいけるんじゃないかということで、Hの耳にピアス代わりのの小つぶカール(チーズ味)をつける。微笑ましいスメルを放っているが、そういう香水をつけたと思えばまぁなんとかなるはずだ。
H「お前ら完全にふざけてるだろ」
僕とO「いや、ふざけてなんか・・・ねぇ?」
さらにダメ押しだ。こうなったらとことんまでHにモテてもらおうじゃないか。
僕が「女の子ってのはギャップに弱い。らしい」といえば、「それは本当にそう。らしい」とOが続く。ギャップってなぁに。普段はツンツンしてるのにふいに優しかったらキュンってしちゃう。ってことなのだろう、たぶん。気持ちはなんとなくわからなくもない。素敵なギャップがあれば、それは確かに武器になる。だから僕らもHのギャップ探しに全力を注いだ。
O「メガネかけてるのに本当は目がいい、とかは?」
H「それただの伊達メガネじゃん。俺本当に目悪いし」
僕「じゃあ普段は背が低いのにふいに高くなる、とかは?」
H「え?それどうやんの?」
いざ探してみるとこれがなかなか見つからないものだ。なるほど、だからギャップを持ってる男はモテるのか。結局Hの推しのギャップは
「うお座なのに肌がカッサカサに乾いてる」
に決まった。これを自己紹介で言ってもらおう。後はHの幸運を祈るだけだ。
H「いや、お前らいい加減にしろよ」
O「ってかH、もうこんな時間だよ?」
H「うわ!ホントだ!やべぇ、早く支度しないと!俺の服どこだ?」
僕「はい」
H「そのデニムのやつじゃねぇよ!最初に決めといたやつだよ!」
O「さっきお前がトイレ行ってる間に隠しといた」
H「バカ野郎!」
僕「ねぇOさん。一番モテない男ってどんなんだと思う?」
O「やっぱり時間にルーズなやつじゃないですかねぇ?」
僕とO「ですよねー」
H「ちっきしょー」
そして本当にあの半ズボンを穿いて僕らのもとから走り去ったH。
残された2人で飲みに行く僕とO。
「俺らをおいて一人で合コンに行くあいつが悪い」
「まったくだね」
帰り道の月ときたらそれはそれは綺麗で。あいつらとはずっと友達でいたい、そんなふうに思った夜だった。
【ブログデザインを一新してみました。不評だったらすぐに戻します】




コメント
くつ下ドーナツ状にする奴はうちの学校にもいましたww
というか全員一度くらいはあるんじゃないですかね?
投稿: icoco | 2008年4月 8日 (火) 07時20分
とんがりコーンめっちゃ笑いました。
投稿: よ | 2008年4月 8日 (火) 20時53分
靴下ドーナツやったなぁwとんがりコーンもww
「うお座なのに肌がカッサカサに乾いてる」
…ナイスギャップ♪゜∀゜
投稿: すぱ | 2008年4月 8日 (火) 23時25分
エイティースアイドルぽくてすてき。
だけどお話するのは遠慮したいです。
投稿: なほ | 2008年4月 9日 (水) 01時25分
前のほうがみやすいぞ
投稿: | 2008年4月 9日 (水) 02時44分
春らしくてかわいーね♪
Hくんのその後が是非知りたいヾ('▽'*)
投稿: あゆ | 2008年4月 9日 (水) 04時18分