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2008年5月

2008年5月29日 (木)

街角の大女優

たまに「ドラマ入ってしまう」人というのがいる。突然アクションがかかるタイプと普段から台本通りのタイプ。演じているというよりは、入り込んでいるという表現のほうが近い。こういった人はまるでテレビドラマのような、キレッキレッのセリフを吐いたり、日常とはかけ離れた状況を作り出してくれる。そしてこのパターンは、男性より女性の方が圧倒的に多いのように思う。ふと気づけば、そこにヒロインが勝手に誕生しているのだ。

例えばドラマ入ってる女性は言う。「○○君に告られたけどフッちゃった・・・でもね、違うの!○○君は悪くないの!あたしが全部悪いの!だから・・・○○君に冷たくしないであげて・・・ね?」。そう言って泣き出す女。お前は一体誰なんだ。

例えばドラマ入ってる女性は言う。「あたし、皆が言うほどピュアじゃないよ・・・」。ごめんなさい、まず皆が言ってるのを聞いたことがないんだ。

例えばドラマ入ってる女性は言う。「私もいつか、こんなコスモスみたいに優しくなれるかな・・・」 そう言って見つめる先に咲くヘチマ。

例えばドラマ入ってる女性は言う。「ガンバ!」。やる気2である。

今日、僕はたまたまロケ現場に遭遇した。もちろんここで言うそれは、カメラもないし、気の利いたBGMもない。そう、例の女の一人舞台のことだ。それは僕がとあるコンビニ前に設置された灰皿の前で、タバコを吸っていたときのことであった。

「ついて来ないで!」

女性の声が響いた。お、おぉ、ドラマだ。僕の視線は当然そっちへと注がれる。女性が早足で歩き、数歩進んではこっちを振り返る。そしてまた早足で歩を進める。はっきりとは解らないが、けっこういい年、だろうか。そして阿修羅のような形相でこっちを振り返っては、吠えるのだ。

「ついて来ないでって言ってるでしょ!」
「いい加減にしてよ!」
「もうついて来ないでってば!」

ただ、この女性は、そんじょそこらのドラマ入ってる女とは明らかに一線を画している。なんと彼女の後ろには、本当に誰もついて来ていないのだ。
こいつはすごい。ひょっとして役に没頭するあまり、相手が見えてしまっているのか。それとも何か。対象が人ではないのか(服の背中のタグのとこについている値札とか?)。意識的なものではなく、霊的なものが見えている可能性も高い。

だるまさんが転んだの「ドラマバージョン」という説も捨てがたい。※注 鬼が早足で前にズンズン進むので、相当急がないと一生終わりません。

いずれにせよすごい。末っ子のわがままぐらい大きな声なのだ。それは周りの人々もその一挙一動に注目する。確かに高視聴率だ。

不思議な事に、段々と、後ろをつけている人(男)が見えてくるような錯覚にさえ陥った。これは紛れもない本物。大女優だ。暗い夜道で前方を歩く女性がこっちを振り返るなり、急に歩く速度を早められて、居た堪れない気持ちになった。なんて、誤解や勘違いから生まれた話はよく聞いたりするが、今回はレベルが違う。

段々と遠ざかるその背中を、僕は呆然と見送った。本当は僕の帰り道もそっちの方向だったのだけれど、別の方向を通って帰った。とてもついて行く気にはならなかったのだ。

あの人は今、安心して眠っているだろうか?気になって仕方がない。
少なくとも僕の気持ちは、あの人について行ってしまっている。

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2008年5月26日 (月)

言葉か態度か

僕の地元には有名な川が流れていて、その川辺には木々が植えられ、きちんと舗装された遊歩道がある。静かで綺麗で心落ち着く場所。僕はそこが大好きだった。ギターを抱え行く時もあったし、ただただタバコをふかしに行く時もあった。釣り人や犬の散歩をする人。不思議と彼らが穏やかに見えた。今でも地元に帰ればたまに行ったりもするけれど、一番多く足を運んだのは高校生のときだったかなぁ。高校が近かったこともあり、制服のまま、何をするでもなく地べたに座り込んでいた。そこに流れる、あの川を眺めながら。

知る人ぞ知る、というかこの場所実は、かなりデートに持って来いなスポットなのである。夜景は綺麗だし、静かだし。ベンチもあるし人は少ない。ところが実際ここをデートに使うカップルは少ない。もちろんいることはいるのだが、その数はこのロケーションにしては相応しくない。まぁその遊歩道自体がマイナーで、その上、老人と犬しかいない地区にあるのは確かにそうなのだが、おそらく一番の原因は別にある。ホームレスだ。ホームレスが尋常じゃないほど多いのだ。

彼らはここに住んでいる。延々と続く、ほぼ均等な距離に置かれたブルーシートの青。発電しているのか知らないが、彼らの家からは小さな光とラジオの音が漏れてくる。洗濯物も干してある。確かにこれではデートには使えない。だって、ジャイアンツが勝つと、ちっちゃいおっさんが大喜びで小屋から飛び出してくるのだ。こんなところにムードなんてあるわけはない。

でも、僕は平気だった。彼らが気にもならなかったし、デートなんかではなく一人だったから。川を眺めながらぼんやりと座っていた。ホームレスとはお互い干渉せず、当たり前であろう距離を保っていた。彼らはプライドが高く、物乞いなんかはしなかった。時にタバコにつける火を借りに来ることはあっても、タバコそのものをせびられることはなかった。

ところが一人だけ、異色なホームレスがいた。名前も知らない、姿も他と変わりない。でも彼は、僕に話しかけてきた。

「お兄ちゃん。火、ある?」

「え?あ、すいません。持ってないです」

確かきっかけはそんなものだったと記憶する。普通のホームレスはそこで去るのだが、彼は違った。尚も言葉を続けてきたのだ。

「お兄ちゃんよく見かけるけど高校生?ちゃんと学校行ってるのか?」

「え?あ、はい。行ってますよ」

その時僕はベンチに座っていたのだけれど、そのホームレスは僕の隣に、ありったけの距離を置いて座った。最初は僕も構えた。だってこんなことは初めてだったから。何か買わされるんじゃないかとか、段ボール教に入れとか言われるんじゃないか、とか。そんな不安も過ぎった。でも、おっさんの話を聞くうちに、そうじゃないことが何となくわかった。あぁ、この人は僕に、いや、僕ではなくとも若者に、伝えたい事があるんだ。

そしてピースな説経が始まった。若いってのはいい。ちゃんと勉強しろ。ここで、理不尽な説経に腹を立てることも、そそくさと立ち去る事もできただろう。でも、僕はそうしなかった。ただ静かにおっさんの話を聞いた。同情なんていうのではなく、男として面白みを感じてしまったのだろう。このおっさんがこうゆう生活をし、何を見て何を思ったのか。興味があった。僕は割りと本気でおっさんの話にのめり込んでいった。

そんな僕の態度におっさんは気をよくしたのか、おっさんの話はさらに熱を帯びていった。

おっさんの話の基本は、金と時間を軸に回っていた。多くの金を稼ぐことは素晴らしいことだが、悪くすれば余裕を失う。金を稼ぐ事だけに縛られて、人生を楽しむことを忘れては本末転倒だ、と。

おっさんは、こう言った。

「確かにホームレスは金銭的な贅沢はできない。でもな、俺は、時間に縛られずに自由に生きれるのも大そうな贅沢だと思うんだよ」

なるほどな、と思った。一理あると思った。おっさんが自ら望んで今のような生活をしているのかはわからない(おそらくそうじゃない)が、一人の男が旅路の果てにたどり着いた答えなのだ。僕はとても一笑に付す気にはならなかった。むしろ、ちょっと格好いいとさえ思ってしまった。そのセリフを期に、ベンチにしばしの沈黙が訪れた。僕はそっとおっさんのほうを見た。

おっさんは、ウィダーインゼリーを美味しそうにちゅうちゅう飲んでいた。

えぇぇぇぇぇぇぇ。別に、別にいいけど・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。ここでそれぇ?金銭的に贅沢できないとか言っといて200いくら?時間に縛られないとか言っといて10秒チャージ!?えぇぇっぇぇ。ここで、何もここでそれを出さなくても・・・!

僕が見ていることに気がつくと、おっさんは「ん?」と言って、ちょっと嬉しそうに笑った。

それからもおっさんの話は続いたが、僕は川に浮かぶビニール袋をただただ目で追っていた。

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2008年5月23日 (金)

アナスイ流モテすぎて涙が出ちゃうテクニック2

Motemote 前回の第一弾からおよそ半年。帰ってきた「アナスイ流モテすぎて涙が出ちゃうテクニック」。いやー世の中の男性の皆様、モテていますか?モテるっていいですね。素敵ですよね。僕は、どうやったらモテるか、それだけを考えて生きています。「あー僕そういうのは興味ないです」、そうですか。そういう人は今度一緒にイルカの話でもしましょう。「いや、別にお前に何や言われたくないし」、そうですか。「お前に言われなくてもモテてるし」、そうですか。そういう人は今度一緒にチョーヤバイ話でもしましょう。それ以外の方。モテるためなら藁にでもすがりついちゃう方。僕と一緒に戦いましょう。えーこれから書くのは僕の経験と頭で作り出した恋愛テクニックです。何度でも言います。僕は普段こんなことばっかり考えて生きています。

前の回では待ち合わせについて書きました。ここからは肝心のデート本番です。レストラン、映画、カラオケどこに行くのもいいですね。どれもこれも素敵なデートです。ただ、僕が正解だと思うデートスポットはちょっと違うんです。僕ならば「高いところ」をお勧めします。東京タワー、橋の上、夜景が見渡せるようなビル。高ければ何でもいいです。

二人の距離をグッと近づける一つの手段として、ボディータッチがあります。これが非常に熱い。「んもう」と言って軽く叩かれるあなた。どうですか。僕だったらそれだけで、自分の中のキノコが山になります。しかし、このボディータッチ。我々男性側から仕掛けると何故か捕まります。「こいつー♪」と女の子のおでこを刺したが最後、女の子はこっちを指差し「こいつ」と一言、警察に指示を出します。不公平とは思いますが、ボディータッチは女性の特権なのです。だったら我々にできることは何か。それはもうボディータッチをしてもらえるように仕向けるだけだ、という結論に達します。

さて僕はデートスポットに高いところがお勧めだと言いました。さっき例に挙げたように、東京タワーだとか、橋の上だとか、高いビルだとか、神棚の上だとか。ここにボディータッチの種が落ちているわけです。見渡せばそこは綺麗な夜景。まるで宝石が散りばめられている様にムードは満点。丸ッとロマンチック。そんな中を二人で歩くわけです。何か起こったって何ら不思議ではありません。

「この夜景より君のほうが綺麗だよ」

そう言って肩を抱き寄せる。いやいや、それは確かに正解なのかも知れないけど。でもそんなことができないからこっちは悩んでいるんです。そんなことができる人はもう卒業です。そうじゃなくて。そうじゃない人は、できるだけ体を小さくしてこう言ってください。

俺・・・高いとこちょっと苦手なんだよね・・・

これです。するとどうなるか。女の子が腕を掴んできます。そして揺らします。ブンっブンっ揺らします。神社の鐘の様に。もしくは背中を押してきたりします。完璧なボディータッチですね。本当に高所恐怖症かどうかなんて関係ないんです。演技が鍵を握るけど、まぁ言ったもの勝ち。女の子は何故そんなことをするか。怖がらせたいんですね。もっともっと。怖がらせて楽しみたい。ちょっとしたいじわるをしたい。怯える背中をワッと押したいわけですよ。そこで「ひぃーひぃー」なんて叫んでみてください。女性が腕を掴む力はもっと強くなり、もっともっと揺らしてくれる。わおっ。

格好悪くたっていい!触ってもらえれば、触ってさえもらえればそれでいい!

この女性の所業はまるで鬼畜のようにも見えますが、大体の人間はこんなサディスティックな部分を持っているように思います。「あー私もやっちゃうかも」という女性の方、いるはずです。「私はそんなひどいことしないしぃ」という女性の方。うんうん、じゃあ、まぁ想像してください。

あなたの側にこんな男がいたとします。見た目も性格もいたって普通。でも一つだけ普通より大きく変わったところがある。その男は10年間横断歩道を渡るとき、白い所以外歩いたことがないんです。「だって黒いとこサメいっし!サメいっし!喰われっし!」そう言って白い所を慎重に踏む男。そんな彼の後姿を見てあなたは思うはずです。

「お、押したい・・・!!!」

何としてでも黒い所を踏ませたくなるはずです。むしろそっちのほうが健全であるとすら思えます。そんな心理を利用したこの作戦、一度試してしてみてはいかがでしょうか。実際にこれで僕は何度か揺らされてます。まぁそれは狙って言ったのではなく、何気なく言ったんですけど。

僕はガチで高所恐怖症なんです。だからこれをやられると15分ぐらい喋れなくなるので、結果的にはうまくいったことはありません。それでも、ちょっと嬉しく思ってしまうあたり、かなり重症なんですけど。ただ、そこにたどり着くプロセスで、くれぐれもうそ臭くならない様に気をつけてください。要するに「高所恐怖症なのに何であの人高いところに行きたがったんだろう・・・」と思われないように、ということです。もしカニが「ジャンケンしましょ」と言って来たら、これは何かあるな、と思うのと一緒です。

これに似た作戦としては「やばい、俺足痺れちゃったバージョン」もあります。何かあっても一切責任はとりませんが、もしよろしければこちらも是非。

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2008年5月21日 (水)

金糸雀

ちょっと下世話な話なのだけれど、とある夜、僕が漫画喫茶にてブログを書いていたときのことだ。

カタカタと無機質なキーボードを叩く音だけの空間に、隣の部屋から声が漏れてきた。部屋と言ってもちゃんとした壁はなく、ただ簡単に仕切られているだけだから、それも仕方がないといも言えようが。何せ発せられる音はほとんど丸聞こえの状態である。当然僕の独り言も聞こえているだろうし、そう、多少の迷惑はお互い様なのだ。漫画喫茶ではよくあることだ。

でも今日はちょっといつもと具合が違う。女性の声なのだが、まぁ、なんていうか、確実にあえぎ声なわけだ。カップルで来店したのだろう。さっきまでは男の声もしていた。あぁ、この狭い空間で及んでいるんだね。強いね。しかしこれが中々どうして気になるもので。

ブログ書いてる最中に

「あー気持ちいひー!」

とか聞こえてくるわけだ。イヒーって何?ヨーデル?集中は乱されるし、意欲も削がれる。もう環境としては最悪。それでもその頃はあまり更新できていなかったので、なんとか書かなきゃと悪戦苦闘する。何か面白いことはないかと頭を捻る。僕は普段、音楽を聞きながら文章を書くという器用な真似ができない。集中できないのだ。だからあえぎ声はかき消せない。平常心を保ち集中しようとするも、形のない毒は、みるみるうちに僕を蝕み、侵食する。

「そこ!そこ!」

どこだよ、と。いやいや、いかんいかん。しっかりしろ俺。両手で耳を塞ぎ、「おし、これで聞こえない!」と思うも、これではキーボードが打てない。相変わらずその声は続いていた。あぁ、もう。うるせーな、ホテル行けよ。段々と僕の中の将太が寿司を握りだす。しかしあえぎ声に悩まされる中で、僕は一つの法則を発見した。あえぎ声とあえぎ声の間に、谷がある。沈黙がある。隣の男が今現在どんな電車に乗っているのかは定かではないが、山手線にだって新宿と原宿の間には代々木がある。いや、代々木も本当は都会なんだけどね。あえぎ声、無音、あえぎ声。ここだ。わずかな光明。無音の間に、なんとか頭の中のアイデアのかけらたちを手繰り寄せる。ビーフジャーキーをちらつかせ。少しづつ。ほーら、こっちだよー。そーっとそーっと。

「・・・。・・・いい!E!いひー!」

そしてアイデアのかけらたちはものの見事に散っていく。もう勘弁してください。いや、でもまぁ待て落ち着け。なぁ。僕は己に問いかける。お前は、こんなものなのか?年間に100本以上ブログを書いてきたんじゃないのか?今こそその真価が問われるときなんじゃないのか?あえぎ声一つで筆が止まる?そんなものなのか?たかがあえぎ声じゃないか。乗り、越えるんだ。これは書き手としての誇りを賭した戦いでもあるんだ。そう考えたら、心が自分でも怖いほどに落ち着いてきた。大丈夫だ。僕はもう乱されない。

「イッちゃう!イッちゃう!」

もうそのまま二度と帰ってくるんじゃねぇぇ!すいません、ダメでした。

もう頭に来た。仏の斉藤さんもここまでだ。僕はタバコを少し強めに消し、紙コップに入った飲み物を飲み干して立ち上がる。お前達は、ちょいとばかりやり過ぎた。別にその行為を責めるつもりはない。むしろとても素敵なことだと思う。ただ、場所を弁えることを忘れちゃいけない。まぁ普段なら最悪目を瞑ろう、いや、耳を塞ごうさ。しかし今、薄い壁一枚隔てて、方や暗い部屋の中で一人ブログの「あん」、方や暗いであろう部屋の中で二人で「あん」である。同じ「あん」でも大違いだ。そのコントラストに狂った僕は、もう黙っていられなかった。嫉妬?あぁ、それもあったろうね。でもね、もっと譲れないものがあるんだよ。僕はストレッチをし、さっき空けた紙コップを手に取った。

こうなったら聞いてやる。あぁ聞いてやるとも。聞かせてもらおうじゃないか。

紙コップを壁に当てて、一遍も残さず聞いてやる。

その高ぶる気持ちを具現化するように、僕はカバンからネクタイを取り出し首に巻く。これで尚一層気合が入る。ほら、僕はちゃんとしたぞ。ちゃんと聞いてやるからな。どう考えてももう、狂っているのだ。壁に向かって一礼をし、正座をする。壁に紙コップを当て、そこに耳を当てた。さぁ、準備オッケーだ!好きなだけあえぐがよい!

・・・しかし音が、しない。

谷、か。例の沈黙だ。次の波がいつ訪れるかわからないので、僕は耳を離せない。まだかまだか。今か今か。

全ての神経を左耳に集中しろ。聞くんだ。ただそれだけに全てをかけろ。まだかまだか。今か今か。僕はじっと息を潜めた。

そして、そのまま朝になった。

結局待ちに待ったあえぎ声は、あれ以来一度も聞こえることもなく。消されたテレビ画面に映りこんだ、自分の顔が見えた。それを見て思う。俺は一体何をしているんだろう。目の前には空白のままのブログの記事。書く?これから?書かない。書けない。もう、ダメだ。僕は帰りの支度をし、伝票を手に取った。

「延長料金が○○円になります」

僕がそうまでして手に入れたかったものは一体何だったのだろう。わからない。もう、何も、わからない。

店から出たときに迎えてくれた朝日が眩し過ぎて、僕はずっと下を向いたまま家に帰った。

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2008年5月18日 (日)

北京オリンピック麻雀

200805181


北京オリンピックが近いということで、特別ルールを含んだ北京オリンピック麻雀を考えてみました。




北京オリンピック麻雀

~ルール~

○基本は普通の麻雀と同じ。

○「東」「南」「西」「北」がそれぞれ「愛ちゃん」「室伏」「オグシオ」「北京」となる。

○「白」「發」「中」がそれぞれ「田村で金」「谷でも金」「ママでも金」となる。

○風牌はないが、「北京」で刻子もしくは槓子を作れば二翻。

○「愛ちゃん」を鳴くときは「ポン」ではなく「サァー!」と言う。(間違えたり言わなかったら罰符)

○「愛ちゃん」であがるときは「ツモ」もしくは「ロン」ではなく「サァー!」と言う。(間違えたり言わなかったら罰符)

○「室伏」であがるときは「ツモ」もしくは「ロン」ではなく、奇声をあげる。(間違えたり言わなくても別にいい)

○「室伏」牌は投げてもいい。(人や物に当てない。投げたら拾う)

○「オグシオ」を刻子または槓子にしてあがると写真を撮られる。

役満:大三金

「田村で金」・「谷でも金」・「ママでも金」の3種類をすべて刻子または槓子にして和了。

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2008年5月14日 (水)

「!」

200805112_2 普段クールな人でも、大人しい人でも、「取り乱す瞬間」というのがある。落ち着きをなくし、慌てふためき、騒ぐにせよ黙るにせよ、兎角行動が尋常でなくなる。例えば、どうしようもなく片思いの相手との接点に、人は取り乱すだろう。例えば、恋人に内緒で合コンに行ったら、相手の中にその恋人がいた時に、人は取り乱すだろう。ただ、今回言いたいのはそうじゃない。もっと純粋に、無条件で、どうにかなってしまうもの。どうしようもなく苦手で、怖くて、わからないもの。

うちのババァにとって「地震」がそれにあたる。たかが震度2だとかそんなもので、これでもかというほどに豹変するのだ。そのビフォーアフターは、「マイカー」と「真イカ」ぐらい違う。見事なまでに取り乱す。「取り乱す」という言葉を作った偉人が、ババァのその姿を見たら、さぞ満足そうに微笑んで成仏するに違いない。例えそれが深夜だろうとなんだろうとお構いなし。迷惑だとか、そんな考えを持てる余裕はないのだろう。おそらく体が勝手に反応してしまうのだ。

「地震地震地震地震!!!」(訳:地震です地震です地震です地震です)

誰もがわかってるその現象を、ババァは大声で改めてお知らせしてくれる。バタバタと走り回り、目を開きに開いて。100円ショップに置いてあっても、絶対に誰も買わない地震探知機。電池は枝豆。ババァが地震に対峙したときに、動きから理性が消える。発言から述語が消える。ひたすらに単語を連発する。

「ドアドアドアドアドア!!!」(訳:ドアを開けてくださいドアを開けてくださいドアを開けてくださいドアを開けてください)

こういった感じだ。地震によりドアが開かなくなるのを危惧しているのだろう。地震が起こったときに、それが小さいものだとしても気を抜かない、というのは大事な事かもしれないし、とりあえずドアを開けようとする姿勢も間違ってはいないだろう。しかし大地震が起こったときに、おそらくババァは死ぬ。崩れ落ちる天井に、自ら飛び込んで死ぬ。こうゆうときこそ落ち着くことは大事なのだ。

「パパパパパパパパパパ!!!」(訳:お父さんお父さんお父さんお父さん)

親父に助けを求めるババァ。見慣れた景色だ。親父は「大丈夫」と言って、ゲームボーイをやっている。地震そのものよりも、ババァの騒ぎのほうがこととなる逆転現象。

「セプセプセプセプ!!!」(訳:愛犬セプちゃん、愛犬セプちゃん、愛犬セプちゃん、愛犬セプちゃん)

「ガスガスガスガス!」(訳:ババァが考えた新しい早口言葉)

エキセントリックだ、。完全にイカれている。普段クールでも大人しくもないババァだが、それでもここまで乱れることは珍しい。本当に地震が嫌いなのだろう。過去にババァと地震との間に、どんなドラマがあったのかは定かではない。

だが、ここでババァだけを異端とするのは決してフェアではないだろう。僕にだってある。誰でも、こういった経験や爆弾を抱えているのではないだろうか。

僕の場合はハチである。そう、虫の。刺すやつである。ハチが、どうにも苦手なのだ。毒針、素直じゃない飛行ルート、あの趣味の悪い黄色。もう意味がわからない。ハチを見た瞬間血が固まり、口が渇き、脳が停止する。動くものを狙うとはわかっていても、全速力でその場から走り出す。およそクレバーでもクールでもない。でも、だって、怖いのだ。じゃあもしそれが、好きな人との初めてのデートだったら?逃げ出したいのに逃げられない。どうしていいのかわからず、狂う。そしてきっと、半笑いで、涎をたらしながら、「ね、ねぇ。こ、子供は何人欲しい?」などと意味不明なことを口にするに違いない。まともじゃないから取り乱すなのだ。

また、ある人はこうだ。小さい頃よく遊んでもらった、ババァの友達の娘さん。少し年上で、僕は実の姉のように慕っていた。その人にとっては蜘蛛の巣が、狂乱へのスイッチだった。普段は面倒見がよくて、とっても優しかったそのお姉さん。自分のお小遣いで、僕にお菓子を買ってくれたお姉さん。そんな天使のようなお姉さんが、蜘蛛の巣に触れた瞬間、奇声を上げ、何故か持っていたサトウキビをぶん回し始めた。普段剣道をやっていたお姉さんだ。その太刀筋は尋常じゃあない。無双。「だ、大丈夫?」近づきたいけど、近づけない。間合いに入ったら殺られる。お姉さんの動きが修羅過ぎて、残像が残り2人に見える。ようやく冷静を取り戻したお姉さんは、何もなかった様にこっちを振り返りニッコリと笑った。僕もそれに笑い返したけれど、一番笑っていたのは間違いなく僕の膝だった。

この手の話に多いのは、虫系とお化け系。高所恐怖症の人にとっての高いところもそうだし、そもそも人が怖いという人もいる。みんな大変だ。

最近何かと地震が多く、実家の家族の安否と安眠を願いつつ、こんな話を書いてみた。

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2008年5月11日 (日)

(SS)母の日

私は、大きな花束を受け取った。綺麗な綺麗なカーネーション。それでも、いつもよりうまくは笑えなかった。去年までは毎年直接手渡しだった家族の花の輪。遠く離れた家族を思った。

___________

遠く離れた空の下、母が電話をプッシュした。
遠く離れた空の下、娘の携帯電話がヴァイブした。

ディスプレイに表示される「着信 実家」の文字。

「もしもし」
「もしもし」
「お母さんだよー」
「うん、わかってるよー。ん?何かあった?」
「元気?」
「え?あぁ、元気だよ」
「そっか。うん」
「なんかあったの?」
「んーん、それだけ」
「あぁ、うん・・・」
「・・・」
「え?なんかあったの?」
「そういうわけじゃないんだけど・・・」

母は思う。
(忘れちゃったかな・・・)

「ほら、今日さ・・・」
「え?何か特別な日だっけ?」
「いや、お母さんもさっき思い出したんだけどさ。母の日だなーと思って」
「あぁ、そういえばそうだったかも」
「あんた毎年カーネーションくれてたよね」
「ん?うん。そうだったねぇ」
「まぁ今年からあんたも一人暮らしだもんね。しょうがないか」
「まぁ、ねぇ」

娘は思う。
(まだ届いてないんだ・・・)

「一人暮らし、どう?」
「んーそれなりに楽しくはやってるよ」
「そっか。よかった。ちゃんとご飯食べてる?」
「うん、食べてるよ」
「コンビニ弁当とかカップラーメンばっかりじゃダメよ?」
「わかってるって。心配しないで」
「たまにはこっちにも帰ってきなさいよ?」
「はいはい。暇を見つけて帰りますよー」
「あんたたまには実家のことも思い出しなさいよー?」
「あはは、何それ」
「なんか寂しいじゃない」

母のすぐそばでチャイムが鳴った。
娘の電話の向こうでチャイムが鳴った。

母は思う。
(誰だろう?)
娘は思う。
(来たかな?ナイスタイミング!)

「あ、誰か来たみたい。ちょっと待ってて」
「はーい」

玄関の前に立つ、荷物を抱えた宅配便。

母はそれを受け取った。判子は引き出しの上から2番目。
娘はその姿を想像した。判子は引き出しの上から2番目。

「おまたせ」
「いいえ」

母は、嬉しかった。
それがわかった娘も、つられて嬉しくなった。

「・・・あんた、ホントに早く帰ってきなね」

娘は思った。
(サプライズ成功!)

「うん。・・・私、実家のこと、全然忘れてなんかないからね」
「え?あぁ、まぁそれはいいとして今ね、おっきいシャケが届いたの!あんたシャケ好きでしょう!早くしないと食べちゃうよ!」

娘は思った。
(・・・え?シャケって何?)

「田中さんから。助かるわぁ」
「・・・あ、そう・・・」

娘は思った。
(田中って誰?私の送ったカーネーションは?)

娘のすぐそばでチャイムが鳴った。
母の電話の向こうでチャイムが鳴った。

「あ、誰か来たみたい。ちょっと待ってて」
「はーい」

玄関の前に立つ、荷物を抱えた宅配便。

娘は、それを受け取った。判子は引き出しの上から3番目。
母は、夕飯を想像する。鮭は中骨の上から3枚に。

娘は、思った。
(今までの癖で送り主の欄に実家の住所を、宛先の欄に一人暮らし先の住所を書いちゃった・・・)

娘は、大きな花束を受け取った。綺麗な綺麗なカーネーション。それでも、いつもよりうまくは笑えなかった。

「・・・おまたせ」
「いいえ」

娘は言った。
「私、やっぱり実家のこと忘れてないみたい」

何も知らない母は、でも嬉しそうに笑った。

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2008年5月10日 (土)

反省会が一番楽しかったりする

200805101 その日の相手である、駅前で待ち合わせた3人組は、それぞれレベルが高かった。期待と不安が入り混じる顔合わせ。今日はなんだか楽しくなりそうだ。合コンには何度も顔を出したが、いつだって緊張はする。でも、それがいいとも思う。慣れ切ってしまうぐらいなら、ドキドキしないぐらいなら、僕は合コンになんて行かないだろう。

中でも一人がちょっと気になる。僕は、回転寿司で本当はプリンが食べたいけど恥ずかしくて手を出せないようなところがあるので、女の子の顔をまともに見ることはできない。けど、それでもタイプに近いことだけは認識できた。まぁ、でもそこはあまりがっつかないにしないと。予約した居酒屋までの道を、女の子のほうを見ないように、クールに、合コン自体にそこまで興味がないように(昨日楽しみで寝れなかったにも関わらず)、友達と話しながら歩いた。今日の合コンをセッティングしてくれたひと時の英雄。仮にWとして、そんなWが小さい声で僕に話しかけてくる。ニヤリと笑って。

「どう?」

僕は答える。

「お前の老後の面倒は俺が見るよ」

居酒屋に着き、それぞれ席に着く。僕の席は幸運にもあの子の正面。偶然(とそれ以外の何らかの力)に感謝する。さっきここに来るまでの道のりで、Wがこんなことも言ってきた。「まずい。もの凄くタイプの子がいるんだが・・・」。僕が気になっている子。ではなく、その隣の子。なるほど。それは応援しよう。家に「ワンダフル」のエロいシーンだけ撮りためた編集ビデオがあることも秘密にしておいてやろう。Wも、ちゃんと狙い通りの席についている。偶然(とそれ以外の何らかの力)に感謝する。ずる賢いかもしれないが、そういった度胸を少しも使わないで済む行動に、僕らはめっぽう強いのだ。

とりあえず乾杯をするために、一杯目のドリンクを頼まないと。男達は、選択権もなくビール。これは何か知らんけど暗黙の了解。拒否権はない。女の子達はメニューを開きあれやこれやとキャッキャッしている。もう一人の女の子が、Wのお気に入りの女の子に言った。

「え?ドリアンどうする?」

「あたしどうしよっかなー・・・」

そのとき、男達の動きは完全に止まっていた。なんだ・・・と?ドリ・・・アン・・・?・・・あだ名か?あだ名だとしてもそれはアリなのか?ドリアン?何故?どうやったらそんなあだ名がつく?名前から来ているとは考えにくいし、だとしたら・・・匂い?匂い・・・なのか?戸惑いと不安が一気に押し寄せてくる。他の男も例外ではない。特にWのダメージは深刻そうだ。やばい。開始早々あっちの世界に飛び立とうとしている。しっかりしろ。気を保て。

女の子たちが注文を終え、飲み物が来るまでの間に僕らは談笑していた。それなりに盛り上がってはいるが、Wの焦点が微妙に定まってないのが気になる。そこで僕の携帯電話が鳴った。合コン中に携帯電話を開くのは確かに感じが悪いが、大体の目星はついていたので仕方がない。僕は一旦席を外し、トイレに行って携帯電話を開いた。やはりWからのメールだ。

「ドリアンってなぁに?それは果物。ドリアンってなぁに?それは匂い。」(原文まま)

内容は大体が思った通りだったが、しかしここまでその惑いが前面に出ているとは。完全にドリアンにやられている。でも、たかがあだ名じゃないか。所以だってわからないというのに。せっかくの合コンをそんなことぐらいで台無しにしてどうするんだ。僕は急いでWに返事を返した。

「どうせ特に深い意味もないあだ名だって。気にするな。そんなことぐらいでくじけるなって。頑張ろう」

僕がトイレから戻ると、定員が飲み物をテーブルに置いていて。僕がテーブルにつくと、乾杯の音頭が鳴った。自己紹介が始まる。まずは男からだ。一番端の僕は3番目。真ん中に座るWの番になるが、Wが怖ろしいほど落ち着いている。楽しんでないのとも違う。キャラ作りとも違う。何かを悟ったような、穏やかだけど、ひどく恐怖を覚える表情。きっと女の子達はこの顔には気づけない。僕だからわかるのだ。こいつ、まだ気にしているのか。僕も無難に自己紹介を終え、女の子たちの番になった。今までより、空気が華やかに、賑やかになる。

「えっと、野口○○です」

女の子が何か言うたびに、男どもがキャッキャする。年下なのに偉そうなやつが、自動改札に挟まれたのを見たかのように。へー野口さんっていうんだ。僕の向かいに座る女の子。個性的な声だが、それも悪くない。野口さんか。野口さん。その後、ドリアン、もう一人の女の子と続き、再び談笑に入った。僕は主に野口さんとしゃべる。楽しい。Wは、話で盛り上げようとはしているが、相変わらず心ここにあらずといった感じだ。ドリアンと呼ばれた女の子が、一杯目のお酒を空ける。中々ペースが早い。単にお酒が好きなだけなのかも知れないけれど、決して飲みすぎろとか早く飲めとか言っているわけではなく、こういった子の印象は僕の中で良い。楽しんでくれているように見える。さっきから感じもいい。ほら見ろ、やっぱりあだ名一つで人を判断してはいけないのだ。ね、W。楽しもう、W。二杯目、飲む? うん。そしてドリアンが野口さんに言った。

野糞、ちょっとメニューとってー」

「はいよー」

そのとき、男達の動きは完全に止まっていた。なんだ・・・と?のぐ・・・そ・・・?あだ名・・・なんだろう。野口だから野糞・・・なのか。わかる。わかる、けど。・・・そんなのってあんまりじゃないか。もっといいのがあったろう。グッチでも。ノッチでもよかったじゃないか。何故?何故そのチョイスなんだ?それとも他に野糞たる所以が?まさか・・・?僕に君の生活に干渉する権利はかけらもないけれど、せめて、せめて「今日はいつものあだ名で呼ばないで」って一言言ってくれれば。僕は、それだけで。

惑いが心を弱くする。見下してるわけじゃない。冷めた、というのも違う。心が、すくんだのだ。

あぁ、これか・・・。この世界か。Wよ、そこにいたのか。なるほどね。確かにここは、ちょっと辛いな。君に謝らなきゃな。暖かい世界に逃げたくもなるな。

タイプだけど、あだ名が「野糞」。

食べたかったけど、恥ずかしくてプリンに手を出せなかったあの日が、なんとなくフラッシュバックした。

「恋愛の尻尾を掴もうとしたときに、人は多大な労力を要する。成就するために、できるだけ長くの助走を取ろうとする。そこは、できるだけ多くの接点を設けるとか、できるだけ障害を減らすとか、そういったことで伸びる滑走路。そして飛ぶ。相手までの距離は様々で、崩れそうになるぐらい遠い時もあるけど、飛ぶ。でも、時には怖がって飛べないことも、助走を取り過ぎて途中で疲れてしまうこともある。」 -- マミー飲む男(ニート)

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2008年5月 8日 (木)

あんグッズ

no.1 あんボールペン  ¥400  状態/Sold out

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あんのロゴが入ったボールペン。赤、青、黒と3色使い分ける事ができて非常に便利です。書き心地だけでなく、握り心地も抜群。是非筆箱に一本入れておきたい商品です。あれ?この文字どこかで見たことあるぞ?と言う方。気のせいです。なんのことかわからないけど、以前まで「an」というロゴの上に書かれていた「アルバイトニュース」という文字を削り取り、よりスタイリッシュに出来上がりました。

no.2 あんコップ  ¥1200  状態/Sold out

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言わずと知れた、あんのオーナーである斉藤アナスイの模様が入ったコップ。実際に斉藤アナスイ自身がとあるガラス工場で作った限定品です。あまりコップに自分の絵をつける人はいないのでしょうか。ガラス工場のお姉さんに、サティアンを見るような目で見られました。そんな苦心の末に出来上がったこのコップ。これで飲み物を飲めば、いつもより美味しく感じること間違いなし!なお、コップの中に入った紙やすりは、撮影用のため商品には含まれません。

no.3 ビックリアンチョコ  ¥100  状態/Sold out

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お菓子が好きなあなたにはこちらがお勧め。ビックリアンチョコ。中にはシールが1枚入っており、コレクションに最適です。やっぱりどこかで見たことある?いいえ、気のせいです。なんか「ア」の字、長いんだけど・・・。いいえ、気のせいです。至るところに黒線が入ってるのは色々と怖いからです。

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中に入っているシールを紹介いたしましょう。オーナーであるアナスイはもちろん、過去あんに出てきた様々なキャラクターがシールになっています。写真の「こうもりババァ」はよくダブることで知られており、大相撲カードで言うところの出島にあたります。っていうかこうもりババァなんて知ってる人いるんですか。全36種。

New no.4 アナポン  ¥200  状態/Sold out

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あんグッズは留まることを知らず、ついにガチャポン界にまで進出。それがこちらの「アナポン」。こちらの商品は、実際に、お金のないアナスイが空腹に耐えかねて食べたことのあるものが景品となっており、アナスイの生活が疑似体験できます。賞味期限を気にしないなどリアリティも追求。写真はトローチ(レア)。全8種。

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2008年5月 7日 (水)

白亜の誕生会

200805071 小学校の頃、友達の女の子の誕生日会に招かれたことがある。友達とはいえ女の子の実家に、怖いぐらい短い半ズボンで遊びに行くなんて今ではちょっと考えられない出来事だ。僕はそこに、道に落ちていても拾わないような貯金箱をプレゼントとして買って持って行った。

そのお宅にお邪魔するのは初めてだった。小学校から少し離れた、余り馴染みのない場所にたった家。その家の前についた僕と友達は驚愕する。それは漫画やテレビに出てきそうな、白をモチーフとした、まるで下町には似つかわしくない豪邸。この付近にこんな家があったなんて。僕の家とも違う。彼の家とも違う。優雅で、繊細な、白の城。確かにその女の子は、給食に出たイカ飯を残すようなところがあったけれど、まさかこんな家に住んでいたとは思わなかった。やっぱり絵を描くのにクーピーを使うような子供はどこか違う。

中もピカピカである。やはり白が基調となる中に置かれる、数々の家具。およそ世間のことなんかわからない小学生の僕にでも、そこに敷かれる絨毯の上でカレーうどんを食べてはいけないことはわかった。知識としてではなく、本能レベルで感じる「高級」。今にもヴァイオリンの音色なんかが聞えてきそうだった。

その屋敷に招待されたクラスメイトたちのうち、もうほとんどが集まっている様子だ。おしゃべりをしたり、ジュースを飲んだり。ただ、みんなどことなく緊張しているような気がする。まぁこんな家だ。僕を含め、それは仕方のないことである。生意気でやんちゃで有名なあいつが、今日はどこか大人しい。普段道端に生えている草を食っているあいつが、出されたお菓子に手をつけられないでいる。とにかくこの空間は、少なくとも僕らにとっては、普通ではなかったのだ。

そんな中でプレゼントに小汚い貯金箱を持ってきてしまった僕である。ただまぁ、幸いにも、みんな少ないお小遣いの中からなんとか買ってきたプレゼントだ。どれもこれも大した差はない。似たり寄ったりである。主役である女の子も、やはり育ちがいいのだろう。どんなプレゼントでもきちんと笑顔で受け取っている。こんな僕ですら「いい加減にしろ」、と思うものでも、だ(完成済みのプラモデル、所々欠けた漫画のセット、野菜 など)。

みんなの緊張も解けて、パーティーも盛り上がってきたころ、僕はふとトイレに行きたくなった。女の子に場所を聞き、ドアを開ける。そこで抱いた感想は、「あ、住めるわ」といったところか。これまたピカピカで広いのだ。そして僕は信じられないものを目撃する。便座が?武装している・・・?そこにある便座が、なんだかうちのよりも格好いいのだ。今でこそ当たり前のようになったウォシュレットやウォームレットだが、当時の僕からしてみればこんな珍しいものはない。何せ初めて見たのだ。便座から水が出る機能を。便座が暖まる機能を。もちろん当時はそれが何だかはわからなかったのだけれど。

とりあえずいつも通り便座に座る。近くに何かのリモコンがある。おやおや。わからないけど押してみたい。これは是非一度、押してみたいぞ。これを押せば、この便座になんらかの変化が起こるのだろう。便座が武装されててそこにリモコンがついているのだ。小学生の僕にだってそれぐらいはわかる。でも。「ビデ」?「チャーム」?聞いた事のない言葉である。一体何が起こるのだ。ボタンに噴水らしき絵が描かれているところから察するに、水が出るのだろうか?しかし、もしこれを押してトイレ内が水浸しになっては大変だ。とてもじゃないが押せはしない。その近くに「暖」と「冷」と書かれたボタンがあった。便座が暖まる?おぉ、これなら押しても大丈夫そうだ。便座が暖まったところで、これといって事故はないように思えた。一度だけ、そーっと「暖」を押してみる。あまり変化がわからない。気持ち程度、暖まったような気がしなくもない。なんだかなぁ。そこで僕は「暖」を連打した。やっぱりよくわからない。こんなものなのか?んーもういいや。人の家のトイレに長時間篭ってるのも具合がよくない。こうして僕は初めての武装トイレ体験を終え、トイレを出た。

トイレから出ると、女の子のお母さんに会った。軽く挨拶をする。小奇麗にまとめた服装は、確かに上品で、この家にこの人ありといった感じである。自分の母親を卑下するつもりは毛頭ないが、それでも比較はしてしまう。この人はきっと長いカタカナの料理を作るのだろう。そしてほんのちょっとしか使ってないバスタオルでも洗濯するのだろう。うちのババァとは違う。着ている服は何?白の。ドレス?そこまで大袈裟ではないのかもしれないが、ポテトチップスを食べたあとに指を拭くような代物でも絶対にないだろう。何を話したらいいのかわからない。僕は失礼のないように、でも逃げるように皆のもとへと帰った。

そして僕が再び輪の中に入り、数秒後のことである。

ガイアッッッッ!!!!

賑やかで穏やかな空気を引き裂いた音。声。叫び声。皆が一斉にその方向へ振り向いた。一瞬場が固まる。どこから?僕が戻ってきた方向。間違いない。トイレだ。声の主は?まるでさっきまでの優しそうなそれとは違う声。でも、おそらく間違いはない。お母さん、である。一体何が起こったのだ?ガイア?娘である女の子もそれに気づいたのだろう。すぐさま叫び声のしたトイレに駆けつけた。僕らも一応それに続く。トイレの前で心配そうに声をかける女の子。「どうしたの!?ママ大丈夫!?」。トイレの中から呻き声が聞える。

「し・が・・・あつ・・・」

お母さんが何を言ったのか、女の子には聞きとれなかったようだ。クラスメイトたちも一様に不安そうな顔をしている。

「何!?よく聞えないよ!どうしたの!?」

心配は止まらない。しかしそのうち、お母さんもなんとか平静を取り戻したのだろう。

「ごめんなさい、なんでもないの。大丈夫よ」

優しい声に戻った。ほっと緊迫の空気が解かれる。女の子やクラスメイトたちは、お母さんの無事に安堵し、再びパーティーが行われていた部屋へと戻った。初めのうちはその影響が出たものの、会は段々とまた盛り上がりを見せてくる。お母さんの叫び声なんてまるでなかったかのように。はたまた、それを忘れようとするかのように。しかし、僕はといえば気が気でない。お母さんのトイレでの叫び声、ずばり思い当たる節があるのだ。そう、僕は便座を暖めた。お母さんの聞き取りづらかったトイレからの一言。それがまず間違いなく、

尻が熱い

だったのだ。おそらく僕がリモコンにて出した指示は、瞬間的ではなく、でもひっそりと忠実に実行されたのだろう。僕ではなく、その直後にトイレに入ったお母さんに牙を剥いたのだ。やばい。どうしよう。逃げ出したい。帰りたい。こうなったらもはや友達の会話なんて耳には入ってこない。隅の方で、いつか責められるかもしれないことに怯えながら、ただパーティーのお開きを今か今かと待つのみである。

5時近くになって、会は終焉を迎えた。女の子とお母さんが、皆を玄関まで見送ってくれる。笑顔であるのはとりあえず一安心ではあるが、お母さんが僕のほうをチラリとも見ようとしないのがひどく気になった。

翌年の誕生日会、開催されなかっただけなのかもしれないが、少なくとも僕が招待されることはなかった。

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2008年5月 2日 (金)

現代版走れメロス 

メロスは激怒した。頼む、線までもってくれと強く思った。メロスは金がない。メロスはいつもカップラーメンばかり食べて暮らしてきた。しかしだからこそ、カップラーメンには人一倍敏感であった。きょう未明メロスは家を出発し、ブックオフでの立ち読みに及んだ。そしてその帰り道、此(こ)のコンビニにやって来た。メロスの家には父も、母も無い。女房も無い。一人暮しだ。メロスは、それゆえ、いつも一人でご飯を食べる。わざわざ家に帰ってからお湯を沸かすのは面倒だ。コンビニにはそれらの悩みを解決してくれる兵器があった。ポッドである。しかしお湯が出るとこを押しているうちにメロスは、ポッドの様子を怪しく思った。ふんがぁ、と情けない音を立てたのだ。この音には聞き覚えがあった。もう、前に誰かがお湯を使って、お湯が切れかけているのは十分あり得ることだが、けれども、まさか自分がお湯を入れている最中に切れるなんてそんな。のんきなメロスも、だんだん不安になってきた。店員を見るが、ちょっと怖そうな男だったので、メロスはすぐに目を逸らす。そして、8割ほど入れたところでお湯が止まった。軽く押しても応えない。こんどはもっと、強い力で押した。ポッドは応えなかった。メロスは両手で揺すったり、更に強くポッドを押し続けたりした。ポッドは、あたりをはばかる低音で、わずかに答えた。

「ふんがぁ」
「ふんがぁふんがぁ」
「ふんがぁ」

聞いてメロスは激怒した。「もうすでにお湯を入れてしまった。新しいお湯が沸くのを待ってはおれぬ」

カップラーメンは3分すれば出来上がってしまう。それ以上待てば麺が伸びてしまう。

南無三、ふんがぁに時間を要し過ぎたか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。きょうに限って、いつもより高いのを買ったのだ。お湯が線まで至っていなくとも、それはそれで濃くて美味しい事だろう。笑って幸せに食べるのだ。メロスは、悠々と液体スープをフタの上に置いた。外は晴れている様子である。身仕度は出来た。さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、お湯をこぼさない様に慎重に歩き出た。

メロスがコンビニから出た時、突然、目の前に自転車に乗った女が躍り出た。
山賊か。いや、それは顔だけで、格好はOL風である。

「危ない、驚いてこぼすところであった」
メロスはそう思った。

メロスが右に避けようとすると、女も同じ方向に避けようとする。メロスが左に避けようとすると、女も同じ方向に避けようとする。こっちにいけばこっち。そっちに行けばそっち。

「さては、私のことが好きなのだな。」
女は、ものも言わず怪訝そうな顔をした。メロスはひょいと、道路の端により、女の通り道を作る。
「気持ちに応えられなくてすまない。気の毒だが食事のためだ!」と思いながら女の背中を少しだけ見送り、さっさと歩いて横断歩道を渡った。

アパートの前まで来て、メロスの足は、はたと、とまった。見よ、前方の光景を。大家のババァが元気よく水撒きをしていた。彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、小さい声で挨拶に及んでみたが、大家のババァは気づく様子なく、すぐに水撒きをやめるようにも見えない。飛び跳ねる水しぶきはいよいよ、ふくれ上がり、水たまりになっている。メロスはようやく決心し、大家のババァに手を挙げて哀願した。「ああ、鎮めたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時です。3分経たぬうちに、時間内に行き着くことが出来なかったら、このカップラーメンが、伸びてしまうのです。」

 大家は水撒きを中断してくれたものの、メロスの叫びをせせら笑う如く、水たまりは未だアパートの玄関に点在している。ここの廊下、濡れるとひどく滑るのだ。そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はメロスも覚悟した。渡りきるより他に無い。ああ、神々も照覧あれ! 水溜りにも負けぬ(カップラーメンへの)愛と私のバランス感覚を、いまこそ発揮して見せる。メロスは、ちょん、と足を踏み入れた。なんのことはない水たまりを相手に、必死の闘争を開始した。満身の力を足にこめて、滑ろうとする体の流れを、なんのこれしきと耐えに耐え、他人から見たらおよそバカである人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍を垂れてくれた。転びそうになりつつも、見事、水たまりの向こう側へ渡ることが出来たのである。ありがたい。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。カップラーメンは既に完成しかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら階段をのぼりだす。そして慎重に3段のぼった時、突然、指にお湯がかかった。

「あつっ!」

もはやここまでか。その熱さに、立ち直る事が出来ぬのだ。天を仰いで、泣きに泣き出した。ああ、あ、水たまりを渡り切り、OLを無事にスルーした韋駄天、ここまで突破して来たメロスよ。真の勇者、メロスよ。今、ここで、指のちょっとした火傷で動けなくなるとは情無い。愛するカップラーメンは、おまえに買われたばかりに、やがて伸びなければならぬ。おまえは、途中で何でも諦める人間、だから仕事も見つからないんだぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。とうとう階段に座り込んだ。指をちょっと火傷すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。私は、これほど努力したのだ。食べ物をそまつにしようなんて心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで歩いて来たのだ。私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の胸を截(た)ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。カップラーメンと水だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。きっと大家に笑われる。

「あの人ったら大事にそうにカップラーメン運んでね、必死に水撒きやめるように言ってきたの!そう必死に(笑)」、と。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。カップラーメンよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも美味しそうだった。私は君のことをいつも気にしていたけど高くて買えなかった。私にとって君は、本当に高嶺の花であったのだ。いちどだって、「本当に美味しいのだろうか」なんて暗い疑惑の雲を、胸に宿したことは無かった。いまだって、君の匂いは私を幸せにしてくれる。ああ、幸せにしてくれる。ありがとう、カップラーメン。よくも私を幸せにしてくれた。それを思えば、たまらない。本当はここで食べてしまってもかまわないのだけれど、残念ながら箸がない。入れ忘れられたのだ。カップラーメン、私は走ったのだ。君を伸びさせるつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。水たまりを突破した。OLの誘惑だって断ってきたのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。実はあのOLは私に、ちょっと大きめな音で「チュッ」と言った。私は、それに対して、本当は聞こえていたけど聞えなかったふりをした。投げキッスだろうと思った。私はそれでこのOLは私に気があると踏んだのだ。けれども、今になってみると、あれはどう考えても舌打ちの音なんだ。私は、愚かだろう。OLは、合点して私を笑い、おそらく格好よくない彼氏にこのこと話すだろう。そうなったら、私は、つらい。私は、永遠に道化師だ。ああ、もういっそ、道化師として生き伸びてやろうか。アパートには私の家が在る。まさか大家だってあれぐらいのことで私をアパートから追い出すような事はしないだろう。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、食べ物を粗末にもする醜い道化師だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉(かな)。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。
 さっきから鼻に、隆々といい匂いがなだれ込んで来る。そっと頭をもたげ、唾を呑んだ。そうだ、スープがあるじゃないか。よろよろ体を起こし、フタを剥がし、液体スープを入れる。その不快なく濁った液体に吸い込まれるようにメロスは顔を近づけた。

スープに口をつけ、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労恢復(かいふく)と共に、わずかながら希望が生れた。麺も食べたい希望である。スープがこれだけ美味しいならば、麺は一体どれほどだ、という希望である。おそらく3分はとっくに過ぎているだろう。しかし、高級なカップラーメンだ。それぐらいでそうそう味が落ちるわけがない。いつか買ってやろうと、ずっと楽しみにしていたのだ。その味にずっと期待していたのだ。私は、そのカップラーメンを今手に持っている。3分なぞは、もはや問題ではない。麺が伸びたら不味くなる、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、食べねばらぬ。いまはただその一事だ。慎重に。歩け! メロス。
 私は高いカップラーメンを買ったのだ。私は高いカップラーメンを持っている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。指をほんのちょっと火傷しているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って歩けるようになったではないか。ありがたい!私は、これから美味しいカップラーメンを食べることが出来るぞ。

一段一段と階段を伸ぼり、厚いチャーシューを想像し、食後の一服を想像し、慎重かつ大胆に、さっきまでよりも早く階段をのぼる。

最後の死力を尽くして、メロスは歩いた。頭の中はラーメンのことで一杯である。その大きな思いにひきずられて歩いた。

そしてようやくたどり着いた3階。自分の部屋の前。

メロスは急いでポケットの中をまさぐる。伸びてもいいとは言ったが、それにしても限度がある。少しでもこの高級カップラーメンを美味しく頂きたい。右のポケット、左のポケット。前、そして後ろ。同じような動作を繰り返すうちに、段々とメロスの顔色が変わってきた-鍵が、ない。

どこで落としたのだろうか。ブックオフか、コンビニか。それともどこかの道端か。兎に角家に入れない。しかし、今からそれを探しに行く時間はない。カップラーメンは相変わらずいい匂いを発しているが、心なしか寂しそうに見えた。

「待て。諦めてはならぬ。大丈夫だ。君はいつ買われるかもわからないのに、あのコンビニで待っていてくれた。段々と棚の下に追いやられても、それでも消えないで待っていてくれた。もはや箸など問題でないのだ。私は食べるぞ。ついてこい!カップラーメン。」

かすれた声で精一杯に精一杯にさけびながら、湯気を上げる麺に、齧り付いた。手づかみである。手づかみで麺を口に運び、スープを撒き散らし、高級カップラーメンに狂ったように喰らいつく。あっぱれ。

「私の望みは叶ったぞ。私は勝ったのだ!」

そこにさっきまで水撒きをしていた、大家のババァが現れた。
「メロスさん。あんた一体何してんの?」

「・・・え?いや、あの、ちょっと鍵なくしちゃって・・・」

勇者は、ひどく赤面した。

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2008年5月 1日 (木)

二人のヒーロー

200805011 うちの両親は僕が幼いときから共働きだ、という事はこのブログにも何度も書いた。だから平日、ババァが家にいることなんてほとんどなかったし、僕はいつも家で留守番をするか、すぐ近所のおばあちゃんの家にお世話になっていた。そんな日々を僕は別に寂しいとは思わなかったし、いや、そりゃ寂しくはあったのだけど、誰かを待つ寂しさと、待つ誰かがいない寂しさは色が違うと思うわけで。まぁ、そんな感じだ。

そんなババァがある日、まだ日も暮れないうちに、おばあちゃんの家に駆け込んできたことがある。息を切らして、すごい勢いで。他でもない僕を迎えに来たのだ。きっとおばあちゃんが心配して、ババァの職場に電話でもしたのだろう。「大丈夫!?」 ババァが僕の顔を見るなりそう言ったのを、記憶力の悪いこの僕が、まるで昨日の事のように覚えている。そんなババァを見たことが、僕にとってそれだけ特別だったのだ。

公園のブランコから落ちて地面に頭を打った。何のことはない。調子に乗って立ち乗りして、勢いについていけずに吹っ飛ばされたのだ。どこにでもありそうな、ほんのちょっとした事件。それでもおばあちゃんの家についた僕が、ひどく元気がなかったのは確かにそう。「何かあったの?」「ブランコから落っこちて頭打った」。痛みなんかはとっくになかったのだけれど、友達の前で醜態を晒してしまったということと、後は子供特有の甘え。それらの要素が僕の口数を減らした。そりゃおばあちゃんだって心配もするだろう。兎にも角にもババァはこうしてやって来たわけだ。

「病院行くよ!」。それからババァは僕にそう言った。「いやだ!」。僕はババァにそう返す。

病院が楽しくないところだと言うのは幼い僕にもわかっていたし、ことを大袈裟にするのも嫌だった。普段怪我も病気もしない元気だけが取り柄だった僕だ。病院なんか行かなくてもどうせ大丈夫だ。・・・だって注射されるかも知れないし。注射は怖い。

「お気に入りのウルトラマン持って行っていいから」

ウルトラマンの人形は、当時の僕の大のお気に入りだった。いつもポケットに入れて持ち歩いていたのだ。結局僕は、ババァの勢いに負け、渋々病院に行くことに。ウルトラマンの人形を片手に握り締め。

当時は何とも思わなかったが、今になれば少し感慨深いものがある。ウルトラマンの話だ。僕はウルトラマンの他にもいくつも人形を持っていた。きっと他の子よりもたくさん。その中でババァは、僕のお気に入りをちゃんと知っていてくれた。僕は朝早かったし、ババァは夜遅かった。親子が共有する時間は少なかったし、僕がババァの前でウルトラマンで遊んだことも少なかっただろう。それでも、あぁ、ちゃんと見ててくれたんだなって。気持ち悪いけれど、そんなことをほんの少しだけ嬉しく思う。

おばあちゃんの家の前に停めた自転車に、ババァが跨る。「後ろ乗って!」。またしても僕の返事は「いやだ!」。ババァの自転車の後ろには、いつの名残か、子供用の座席がついていた。え?それに乗れと?そんなの嫌に決まっている。幼いとはいえ、それなりにつまらないプライドがある。母親の運転する自転車の後ろに乗るのは、もっとちっちゃい子がすることだ。格好悪い。そんなこと恥ずかしくてできるもんか。それに僕だって自転車を持っていたのだ。しかし、ぶつくさ文句を言う僕を、ババァは一刀両断した。

「いいから早く!」

そう言って振り返った母の顔に、目に、声に僕は負けた。僕は生まれてこの方一度もババァを怖いと思ったことはないが、その時のババァには確かに迫力があった。でも、なんだろう。安心も、したのだ。普段より取り乱してるはずのババァなのに、それでも不思議と頼っていい気がした。安心感があった。今をもってあの時の感情に明確な説明はできないけれど、何ていうか、それが「母親」なのだろうな。

僕の小さな小さな事故に職場からわざわざ駆けつけてきて。息を切らして一生懸命心配してる。強引なまでに病院に連れて行こうとして。挙句のはてには自分の自転車の後ろに乗せようとしてる。なんだそりゃ。間違いだらけだぜ。でも、きっと、たぶん、こんな親だったからこそ、僕は留守番が寂しくなかったのかも知れない。一人でも孤独を感じずに済んだのかも知れない。それなりにいい親、だと思う。友達には会わせたくないけれど。

だから僕はそんな母親の言うとおり、自転車の後ろに乗ろうと決めた。

お気に入りのウルトラマンの人形。乗る際に邪魔にならないよう、先に座席に置いた。ババァに買ってもらった大切な人形。

ウルトラマンとお母さんがいれば、きっと病院だって怖くないんだ。なんて。

そしてババァがえらい勢いで自転車をこぎ始める。

すごいスピードで。

風を切って。

僕を置いて。

ウルトラマンを病院へ。

呆然である。

えええええ。ちょ、俺まだ乗ってないんだけど・・・。

少ししてババァが戻ってきた。高らかに上げた片手にウルトラマンを握り締め、どういうつもりか大笑いしている。ダメだ、完全にいかれてる。

そのときの僕が今の僕であったなら、強引なまでにババァを病院に連れて行ったことだろう。

まぁ自転車は無理だとしても、負ぶうぐらいはかまわない。

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