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2009年10月

2009年10月 7日 (水)

BEll

小学生のころ、僕はベルマークを集めていた。

ご存じだろうか、ベルマーク。お菓子の箱や文房具のパッケージなどについていた、あの鐘のマークである。

ベルマークを集めると、集めた点数により、様々な商品と交換してもらえる。1点が1円換算となり、協賛している企業の商品と引き換えられる。

皆様の中には、通っていた小学校からベルマークを集めるように言われた方も多いだろう。そう、集められたベルマークは、生徒から学校に渡り、学校から団体に渡るシステムになっているのだ。そして、それに応じた商品が、団体から学校に届く、と。

ざっと説明すれば、そんなシステムになっている。

・・・これはおかしい。客観的に見て、明らかに一番頑張っているのに、ほとんど報われていないパートがある。言わずもがな、我ら生徒である。確かに自分の学校の設備が充実することは、いいことだ。いいことだけど、なんか、ねぇ。そう考えたのが、当時小学生だった僕だった。最悪のクソガキである。

僕はベルマークを学校に寄付しない。みんなで力を合わせない。

僕の通っていた小学校が、生徒からベルマークを無理に徴収しないことも追い風になった。たとえそうゆう学校であっても、僕はまぁ自分のベルマークを隠していただろう。

これは僕のベルマークだ。一人で集められる点数なんてたかが知れている。それでも、皆で集めたたところで、そのベルマークは避難訓練のときに先生が悪ノリしてかぶるヘルメットになるだけだ。僕は自分一人で集めて、自分専用の一輪車をもらいます。だから僕は、最低の子供だったのだ。

それからというもの、僕はベルマーク集めに没頭した。お菓子を買うときはベルマークがついてるかどうかで選んだし、スーパーに行けば親に「おじいちゃん、このチクワ大好きだよ」と嘘もついた。
一度ついた嘘は止められず、「おじいちゃん、このチクワ以外何も食べたくないって」と言いだした頃には、うちのおじいちゃんは1日2食のペースでチクワを食べる羽目になっていた。確かそのチクワが2点(相撲でいうところの琴稲妻ぐらい)とかそこそこの点数で、当時の僕はそれに目がくらんでしまったのだ。おじいちゃんには本当に悪いことをした。

手持ちのベルマークが100点を超えたときの喜びは、今でも覚えている。日々1点1点貯め、ようやくたどり着いたその地点。嬉しくないわけがなかった。少年が「達成感」というものを知ったのは、もしかしたらその夜が初めてだったかもしれない。

ところが、僕は人にその偉業を話さなかった。いや、話せなかったと言ったほうが正しいだろう。ベルマークを個人で集めることは、いわば学校への背信行為である。それは紛れもない裏切りである。もしバレたらどうなることか。目を閉じれば、隣のクラスの脇先生に、耳元で「大造じいさんとガン」を大声で朗読されるという拷問が頭に浮かんだ。

もちろん友達にだって言えやしない。僕は日々の学校生活の中で、ベルマークのべの字も出さなかった。彼らの中で僕は、当然ベルマーカーであるはずもなく、ただ「なんかひたすらドラクエ5の攻略本(下巻)を模写している子」でしかなかったはずだ。でも、それでいい。それしかなかったし、それでよかったのだ。

ただひとつ問題があるとすれば、それはうちの兄だった。兄は人より若干偏差値が可愛かったため、紙吹雪とかチョウチョとか、そうゆうヒラヒラ舞うものに目がなかった。やつにバレれば、せっかく集めたベルマークをマンションのベランダからぶちまけるに違いない。四六時中ともに過ごしたあの頃において、あれほど兄を警戒した時期もなかっただろう。

しかし、それだけの細心の注意を払っていたにも関わらず、ついにその日は来てしまう。「うわぁー、なにこれすげー!」。子供部屋からその声が聞こえたとき、僕はひどく嫌な予感がした。・・・今日お兄ちゃん昼寝してたよな・・・。兄は当時、お昼寝をしないと妖精が見えるという変わった体質だった。まずいな。すげーと思ったものが妖精ではない以上、残るはあれしかない。

案の定、兄は僕が何よりも大切にしていた袋を開けていた。言うまでもなく、中身はベルマークである。やばいな、どうしよう。今までの苦労が・・・。
「なんかわかんないけど、これキレイだから、これ1枚ちょうだい?」
「うんいいよ。そのかわりもうその袋にさわっちゃダメだよ?」
「うん、わかった」
なんか2点で買収できた。

最大の難関であった兄を落した以上、もはや僕の前には何の障害もなかった。ベルマークも、日々順調に貯まっていった。一輪車は、たぶん1万点ぐらい。このままいけば、高校生になる頃には念願の一輪車が手に入っているはずだ。その計画に対し、何の疑問も抱かなかったのは、おそらく我が家の血筋だろう。

高校生のとき僕は、もちろん一輪車を手にしてはいなかった。

高学年になり、中学校に入った。興味は色んなものにうつり、日々薄くなっていたベルマークへの関心は、いつの日か完全になくなった。

あれだけあったベルマークの行き先を、僕は覚えていない。あれだけ大事にしていたベルマークの最後を、僕は覚えていない。

僕が唯一使ったベルマーク2点分は、何でもない想い出と引き換えになった。

>【目標15位以内キープ。応援よろしくお願いします。】

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