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2012年6月

2012年6月15日 (金)

矛と盾とご飯と卵と

ブログ、しばらく更新できずに申し訳ございませんでした。その間、ずっと書きたいなーと思ってたことがあって。それが、うちのおばあちゃんのこと。 大好きなおばあちゃんのことです。

 

小柄で、もの静かで、いつもニコニコしていたおばあちゃん。

 

多分うちのおばあちゃんは、僕のことを永遠に子供だと思ってるんです。それでもって多分、僕のお腹は無限にすくものだとも思ってるんです。

 

幼い頃、おばあちゃんは家のすぐそばに住んでいました。両親が共働きだった僕は、多くの時間をおばあちゃんの家で過ごしました。いわゆる、「おばあちゃん子」ってやつですね。

 

その頃おばあちゃんは、僕の顔を見る度に、こう聞いてきました。「大丈夫?お腹すいてない?」「お腹は大丈夫?豆モチあるよ?」「ご飯食べた?ごかぼ(五家宝)あるよ?」

 

わかんないけど、そういうものなのかなぁ、と。孫のお腹のすき具合が、そんなに心配なのかなぁ、と。計8万回ぐらい聞かされた「大丈夫?おなかすいてない?」。今でも目を閉じれば、その声は鮮明に思い出せます。

 

ちなみに、この前のブログでもチラっと書いたんですけど、近頃では、お母さんもこれをよく言うようになりまして。やはり親子って似るんですかね。2人して畳み掛けてくるわけです。

 

おばあちゃん「大丈夫?お腹すいてない?」
お母さん「お腹すいてるでしょ?何食べる?」
僕「いや、別にすいてないかな」
お ばあちゃん「あらそう。じゃあ何食べる?」
お母さん「カレー?」
おばあちゃん「麦茶飲む?」
僕「いや、だから…」
おば ちゃん「ご飯がいい?」
お母さん「それともライス?」
おばあちゃん「新鮮な」
お母さん「お野菜?」

 

うるせぇ。反抗期じゃないけど、うるせぇ。ご飯がいい、それともライスって何だよ。新鮮なお野菜で親子の絆を発揮すんのやめろよ。

 

そしてあれは、僕が小学校高学年の頃だったかな。覚えておりますでしょうか、「たまごっち」の大ブーム。そうそう、クラスメイトのマーくんがチャリ ごとドブに突っ込んでぶっ壊したアレあれ。うちの兄弟もね、やってたんですよ。それも、結構ハマってた。初めて父性に目覚めた夏、青色、スイカバー。

 

そんなわけでね、たまごっち。さっきも言った通り、僕は大体の時間をおばあちゃんの家で過ごしていたので、当然、おばあちゃんの前でもそれをやっていて。そしたらおばあちゃんが、興味津々で聞いてくるわけです。

 

おばあちゃん「ねぇねぇ。それ、なぁに?」
僕「んー、たまごっち」
おばあちゃん「え?シャケほっけ?」

 

僕は、小学生ながらに一生懸命説明しました。今、この子を育ててるんだ。この子と遊んであげたり、ご飯をあげたりするんだ。おばあちゃんね、その時 確かに「…ピクっ」ってしたの。今思えばあれは、僕が言った「ご飯」って単語に反応したんだと思うんですけど。

 

小学校の頃の僕は、お昼寝が毎日の日課でした。まだ日も落ちきらない夏の候、首振りの扇風機に当たりながらタオルケットに包まれるその時間は、何物にも代え難く。そして目を覚ませば、おばあちゃんの顔があり…。何にも心配なんてなかった。ただただ、毎日が楽しかった。でも、その日の目覚めだけは、いつもとちょっと違ったものでした。

 

おばあちゃん「あ、起きたのかい?今、たまごちゃんにご飯をあげてるんだ」

 

「ご飯のあげ方なんか、教えてないよな…」、ふと嫌な予感がしました。でも、そこはさすがおばあちゃん。ご飯をあげることに関しては、エキスパートです。…そうそう、そのドライバーみたいなのでね、俺のたまごっち分解してね

 

…こ、このババァ、なんか電池のふた開けて、ご飯粒詰め込んでる…。

 

一瞬で、目、覚めたよね。でもその嬉しそうな顔見たら、何も言えなかったよね。「…あ、ありがと」って言ったら、「大丈夫?お前もご飯食べる?」 だって。うん、食べる。でも、ちょっとでいい(って言っても鬼盛り来る)。

 

次の日、クラスメイトたちがたまごっちの話に花を咲かせる中、僕とマーくんは2人で「どの公園の土が一番美味しそうか」というテーマで休み時間が過ぎるのを待ちました。

 

しょうがないよ。おばあちゃん×ご飯だもん。そりゃ、与えるよ。まぁね、結局は、うちのおばあちゃんはそういうところが可愛いって話なんですけどね。

 

孫のお腹を心配すると同時に、孫のご飯を邪魔するものもどうしても許せないみたいで。夏場だし、虫とか結構飛んでくるじゃないですか。窓開けっ放しだったし、おばあちゃん家一階だったし。結構ブンブン来るんですけど。

 

いや、おばあちゃんってすごいね。全然素手で行くね。全く臆する様子なく。何の躊躇のかけらも見せず。素手で虫を捕まえては、窓の外に逃がすおばあちゃん。本当、頼りになるなる。もう、ずっと一緒にいたい!

 

ただ、やはりというか、歳も歳なもので。ちょっと目が弱ってるところもあって。そうですね、机の上に置いてあった印鑑、思いっきり窓の外にぶん投げたときはちょっとビックリしたなぁ。

 

僕「お、おばあちゃん、今の…」
おばあちゃん「ん?虫かい?」
僕「いや、虫じゃ、なかったんじゃ…」
おばあちゃん「…!あらやだ!」
僕「ど、どうしよう?」
おばあちゃん「大丈夫、心配ないわよ(ちょっと泡吹きながら)」

 

夜の町 印鑑探し 祖母とガキ
(無事見つかるも 先っぽ破損)

 

まぁ図らずも、五・七・五(七・七)なわけですけども。

 

そんなわけで、おばあちゃんにはすっごく優しくしてもらいました。ブランコから落ちて泣いたときも。転んで怪我して泣いたときも。E.T.観て感動 して泣いたときも(なんか恥ずかしくて「お腹痛い」って嘘つきました。ごめんなさい)。いっつも慰めてくれて。いつも側にいてくれた。

 

例えば僕がブログで「おいなりさん」とかよく使うのは、これはもうおばあちゃんの影響ですね。おばあちゃんは、隙あらば、おいなりさんの量産体制に入っていたもので…。

 

さて。

 

そんなおばあちゃんが入院したのは、僕が大学2年生の頃。癌でした。たしかおばあちゃんは、そのときもう80歳をまわっていたのかな。まぁまぁあれだけ元気だったおばあちゃんも、さすがに歳には勝てないようで。

 

あ、すいません。この流れ嫌なんでちょっとぶった切りますけど、おばあちゃんはその後無事退院。今でもピンピンしております。

 

僕はその頃一人暮らしをしていたのですが、学校やバイト終わりにはよくお見舞いに通っていました。「大丈夫?ちゃんとご飯食べてる?なんか顔が長くなったような気がするけど…」。おばあちゃん、こんなときにまで心配してくれてありがと。でも、それ元からなんだ。いくつかの管に繋がれてはいましたが、 顔色もよく、おばあちゃんはどこか入院生活を楽しんでいるようにも見えました。

 

しかし問題は、病院を退院してからでした。家に戻ってきたおばあちゃんが、元気がない…ことはない、というか、元気はある、というか、元気が有り余ってるというか、元気丸出しというか。えっと、どした?半ズボンはく?

 

妙に元気なのです。いや、それはもちろんいいこと。でも何か、「あれ?白湯と間違えてレッドブル飲んだ?」ってぐらい元気で。

 

おばあちゃんが入院すると聞いたときは、立っていられない程に動揺した僕ら家族。病室でベッドに横たわる姿を見て、涙が止まらなくなった僕ら家族。もちろん、元気になってくれて嬉しく無いはずはありません。

 

おばあちゃん「入院中ずっと暇だったし、何か習い事でもしてみたいなー」

 

だからそんな願いも、僕らとしては全部叶えてあげたい。全部受け止めてあげたい。子供を育て、孫を育てたおばあちゃん。これからの時間は、もう全部自分のために使ってくれていいんだよ、と。ねぇ、おばあちゃん。おばあちゃんのやりたいことって、なぁに?

 

おばあちゃん「ティンベー・ローチン」

 

えっと、あの、そうじゃなくて。おばあちゃんのやってみたい習い事って何?

 

お母さん「え?」
おばあちゃん「ティンベー・ローチン!
兄「あ?」
おばあちゃん「ティンベー・ローチン!!
僕「…」
おばあちゃん「ティンベー・ローチン!!!

 

そっかそっか、これは意外だったなぁ。おばあちゃん、ティンベー・ローチンがやりたかったのか。なるほどなるほど。気づいてあげられなくて悪かった なー。

 

…ティンベー・ローチンって何だよ…。

 

僕はその日の夜、インターネットでティンベー・ローチンについて調べました。おばあちゃん、待っててね。今その教室とか探してあげるからね。てぃんべー、中黒、ろーちん、と…。

 

ティンベー・ローチンとは…沖縄の古武道。なんか亀の甲羅みたいな盾(ティンベー)と短い槍みたいなやつ(ローチン)を持って戦う。

Tinbe1

…あのね、ひと言だけ言っていい?やめとけ。

 

怖いよ。もっとこうね、お習字ーとか、絵画ーとかなら止めない。むしろおすすめしちゃう。でもね、槍て。亀の甲羅て。いや、ティンベー・ローチンは全然悪く無いんだけど、それを80過ぎてから始めるのはどうなんだと。そして、その情報どっから仕入れてきたんだと。元気にもほどがある。

 

おばあちゃん「ティンベー・ローチン!」

 

もうね、それ言いたいだけでしょ。ティンベー・ローチン言いたいだけでしょ。いや、だからティンベー・ローチンって何だよ。大体その歳で何と戦うんだよ。

 

おばあちゃん「ティンベー・ローチン!!!」

 

わかったわかった。皆さん、「うちの近所でママさんティンベー・ローチンやってるよー」とかあったら、是非教えてください。

 

今のところティンベー・ローチンはやっていませんが、おばあちゃんは相変わらず元気な様子。いつもニコニコ顔で聞いてくるのです。「大丈夫?お腹すいてない?」

 

いつまでも、長生きしてくれたらと。おばあちゃんの顔を見るたびに、ただただそれだけを願うのです。おや、今日もあの声が聞こえてきましたね。

 

おばあちゃん「ちゃんとご飯食べた?お腹すいてない?しっかり食べなきゃダメよ、ティンベー」

 

うん大丈夫、ちゃんと食べたよ。ありがとう、おばあちゃん。(俺、ティンベーじゃないけど)

 

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